ゲームスナッチ管理人のユウ(@gamesnatch1988)です。。PS4で2020年6月にソニー・インタラクティブエンタテインメントより発売(開発はノーティドッグ)となったサバイバルアクション「The Last of Us Part II」をクリアしたのでレビュー記事を作成しました。
目次でチェック!
ゲーム概要
ジャンル | サバイバルアクション |
ハード | PS4 |
メーカー | ソニー・インタラクティブエンタテインメント |
発売日 | 2020年6月19日 |
価格 | 8,900円(税別) |
レビューバージョン | v1.02(PS4Pro) |
ストーリー
謎の感染爆発によって変わり果てたアメリカを横断した危険な旅路から5年、エリーとジョエルはワイオミング州ジャクソンで暮らしていた。
生き残った者たち(生存者たち)によるコミュニティーは順調に発展し、二人は安らぎと落ち着きを取り戻したかのように見えた。
もちろん、さまざまな危険は存在する。
感染者とそれ以外――惨めな境遇にいる他の生存者たちだ。
そして、あるすさまじい出来事が平和を崩壊させたとき、エリーの無慈悲な旅が再び始まる。
裁きを下し、すべてを終わらせるために。
ひとり、またひとりと、標的を追い詰めてゆくエリーが見出したのは、自らの行いによって生み出された、心と身体を揺さぶる凄惨な連鎖だった。
(公式サイトより引用)
評価点
感情の起伏を促す圧倒的なストーリーテリング
「The Last of Us」の特徴の一つである緻密に描かれるストーリーテリングは本作でも健在です。しかしながら、時系列に沿ってリニアに進行した前作と比較して、「The Last of Us Part II」では構造が複雑になっています。登場人物が増加、複数の視点から描かれる群像劇形式が導入され、プレイアブルな回想シーンを含め、現在、過去、未来が交錯しつつ物語が語られます。複雑さが増しただけでなく、ノーティドッグ作品の中で群を抜いて野心的なシナリオになっていて、それは時としてプレイを中断してしまいかねないほどにプレイヤーを突き放す手法が導入されています。
序盤で発生する衝撃的な事件によりエリーの復讐の旅の幕が明けます。暴力表現も本作の特徴の一つで、目を覆いたくなるほどの凄惨なシーンをとことんリアルに描くことで、プレイヤーをエリーに感情移入させます。そして、様々な手法により、怒り、悲しみ、嫌悪、困惑、後悔など多くの感情の起伏をプレイヤーに与えます。そしてプレイヤーの感情に迷いを与えます。わたしはゲームという媒体でここまで感情を揺るがされる体験を今までに経験したことがありません。賛否を呼ぶであろうシナリオであることは確かですが、ゲーム体験を数段間進化させた作品であることは間違いないと感じました。
正統進化した隙のないゲームシステム
PS3で発売となった「The Last of Us」はサバイバルアクションとして完成度の高いゲームシステムが構築されていました。「The Last of Us Part II」では革新性はないものの、前作のシステムを踏襲しつつ全てを丁寧に改善させていて隙がない作りになっています。
レベルデザインが優れており「戦闘と探索」、「静と動」のバランスがとれていて、プレイヤーにサバイバルをしていると実感させてくれる絶妙な調整がされています。前作と比較するとノーマル難易度は若干易しくなったものの、「ベリーイージー」から「サバイバル」まで五段階の難易度があり、「敵の強さ」や「資源の量」など詳細項目の個別設定も可能となっているため、幅広いユーザー層をカバーしています。
探索可能な領域が拡張されセミオープンなエリアが登場し自由度が増しました。弾薬や資源だけでなく、遺物などのテキストアーカイブや特定の条件で発生する会話イベント、新たな武器やスキルを覚えるために必要となるサバイバルガイドやサプリメントなど豊富な収集要素が探索の重要度を高めてくれています。
前作ではやや単調であった謎解き要素にもテコ入れがされていて、進路の確保に関しても解決のシチュエーションが増加、新たに追加された金庫の鍵開けではしっかりと周りを観察し、入手したテキストを確認することが重要となり謎解きに適度な快感をもたらしてくれています。
戦術性が増した戦闘と快適なステルス要素
サバイバル要素についての詳細は上述しましたが、戦闘要素も新規要素が多数追加され快適なゲームプレイに繋がる細かい調整がされています。近接戦闘において回避アクションが追加され、即死攻撃を避けることが可能となり、回避からのカウンターなどの要素も加わり、爽快感を感じられる戦闘に進化しました。また、銃撃を受けて倒れてしまっても倒れた状態のまますぐに反撃に転じることができたり、弓の攻撃を受けた際に矢を抜かないと出血ダメージを受けたりとリアルさも増しています。自然なモーションで操作できるため、戦闘システムでストレスを感じる場面はほぼなくなっています。
ナイフが消耗品でなくなったため、ステルスが有効に働く場面が多くなりました。匍匐移動が可能となったことで、草むらや車の下など隠れられる場所が増え、ステルス行動のバラエティも増しています。ただし、敵側のAIも大きく進化していて戦略的な行動を取ってくるようになっています。本作で新たに登場する「犬」の存在も大きく、隠れていても匂いで追ってくるため、一箇所に留まることができなくなるなど前作の戦術だけでは突破できなくなっています。さらに戦闘シーンが展開されるエリアは前作より広くなっていて、位置どりや移動ルートの構築などの戦略性も高まっています。ステルスと銃撃どちらを選ぶかはプレイヤー次第であり、どちらでも突破できる自由度の高さも魅力でした。
最高のグラフィックで描かれる終末世界
PS3最高グラフィックと評された前作に引き続き、本作もPS4最高レベルのグラフィックを実現しています。パンデミック後の退廃的な世界は、かつて存在した文明と自然の侵食した破滅的でありながら美しい風景として緻密に描写されています。外観だけでなく建物内部も散乱している小物に至るまで一切の妥協なく描かれています。
搭載されているフォトモードで撮影した写真はどこを切り取ってもアート作品のようです。どこを歩いても見惚れるほど美しいので、ただ散策しているだけでも楽しく、探索要素を増長させる作りは素晴らしく感じました。
背景だけでなく人物描写も自然で滑らかです。「怒り」の表情一つ取っても全てのシーンで異なる描写がされているんじゃないかと思えるほどのパターンが用意されていて、ストーリーテリングに効果的に用いられています。人間の動きもリアルさが重視されていて、自然な挙動で動けるため、それがプレイヤーの操作に関するストレスを感じさせない要因にもなっていました。
前作から続く問題に一つの答えを提示している
「Last of Us」では運び屋である中年男性ジョエルとウイルスの抗体をもつ少女エリーの繊細な関係性が丁寧に描写されました。そして、ラストシーンでジョエルが下した難しい決断が多くのプレイヤーに評価されました。しかしながら、その決断がその後のジョエルとエリーの関係にどのような影響を及ぼしたかは、本作が発売されるまでプレイヤーに委ねられていました。
本作は「絡み合う復讐の連鎖」がメインテーマとなっています。複雑な構成であり全てが語られる訳ではないので、プレイヤーごとに考察の余地が多分にある作品です。ネタバレ無しでは多くは語れませんが、開発者が伝えたかった本当のテーマは「ジョエルとエリーの贖罪」の物語であったのではないかと感じました。群像劇の手法を取ったのもそれを語るためであったと。
兎にも角にも前作での難しいラストの展開から、本作独自のテーマを見事に収束させていて、エンディングでは感動のあまり(ゲームで泣くことは滅多にありませんが)涙を流してしまいました。ジョエルとエリーの関係にも一定の終止符が打たれたと感じています。
問題点
集中力と忍耐力が必要なゲームプレイ
本作のテーマとして挙げられているのは「復讐の連鎖」です。プレイヤーの心を折ってくるような容赦のない展開やリアルに描かれる暴力表現により、プレイに集中力と忍耐力が必要となってきます。時にはプレイを中断させてしまいかねません。
前作のプレイは必須
前作のシナリオで必要な部分は最低限冒頭で語られるものの、前作のプレイは必須であると感じました。前作で語られたジョエルとエリーの関係とラストの決断を前提としているため、感情移入の度合いが大きく異なってきます。元はPS3で発売された作品となりますが、PS4でリマスター版が発売されているのでそちらのプレイを推奨です。(前作のレビューも参考にしていただけると幸いです。)
総合評価
「The Last of Us」というパーフェクトであった作品の続編への不安は大きかった。しかしそれは杞憂だったようだ。既に完成度の高かった前作を大幅に改善しており、自由度の高まった戦闘、過激な暴力描写、快適性の増したステルス、最高のグラフィックで描かれる美しくも荒廃した世界など、全てが高い次元で纏まっていて隙がない。そして本作を語る上で最も重要なのはストーリーだ。表面上は救いのない絡みあう復讐の連鎖が描かれているが、その裏で淡々と語られるのはジョエルとエリーの贖罪の物語であった。前作の最後にジョエルがとった決断に対する二人の関係性に決着をつけている。ネタバレ無しでは多くは語れないが、ゲームという媒体でここまで感情の起伏を促された体験はしたことがない。一つ欠点があるとすればプレイヤーを凄まじく疲弊させてしまうことだ。それは時としてゲームを中断させてしまうほどのものである。それでも一つ確かなことは、本作はPS4世代の最高傑作の一つであり、ノーティドッグの底力を見せつけた会心の作品だということだ。
【PS4】The Last of Us Part II 【CEROレーティング「Z」】
コメントはこちら